日本工業大学との共同研究を行っています!
山陽工業は、古くなった建物や設備の修繕・改修工事を行う建設会社です。各種工事に対応していますが、特に防水・塗装工事を得意としており、毎日多くの工事を請け負っています。
そしてその傍ら、いくつかの大学と共同研究を進めており、建物の寿命を延ばすため、工法や材質・材料の実験を行っています。
今回は日本工業大学に赴き、建物の基盤となることの多いコンクリートの試験体を複数作りました。その作業の様子をご紹介していきたいと思います!
共同研究ということで、大学の先生の専門的なアドバイスや学生さんのご助力を頂きながら進めて参ります。
試験体作りの大まかな流れとしては、一から作ったコンクリートにわざとひび割れを入れて、種類の異なる補修や塗料を試していきます。同じコンクリートでありながら、全く違う仕上げを施された試験体は劣化の速度や様子にも変化が現れるでしょう。
長い時間をかけて試験体の経過観察、耐久性テストを行うことで、コンクリートが本当に長持ちする補修方法や塗料、またその組み合わせを検証することができます。
果たしてコンクリートを長持ちさせるにはどのような方法が最適なのか。
本日は、長い共同研究の第一歩となる実験日なのです。
ということで一番初めに取り掛かるのはコンクリートの打設です。
打設とは、建築の基礎となる固まっていない状態のコンクリート(=生コンクリート)を型枠の中に流し込む作業のことを言います。
実際の作業現場等では下記のように、コンクリートの打設をすることで建物の基盤を作っていくことが多いですね。
ですが、今回の目的は「コンクリートの試験体を作って、その経過観察を行う」ことにあるので密度や大きさ等、同じ条件下にあるコンクリートを最初から作る必要があります。
型枠にコンクリートを流し込みました。
形、大きさの異なるコンクリートを作った理由は、それぞれを建物の基盤に見立てているからです。平たい直方体は建物の壁を、縦長の直方体や円柱は建物の柱をイメージしています。
~数週間後~
乾燥させて研磨したコンクリートがこちらです。
同種類のコンクリートの中でも、鉄筋が埋め込まれたもの、そうでないもの、はたまたジャンカと呼ばれるコンクリート構造物の不良部分を再現したものまで、様々なコンクリートが出来上がりました。
見た目には分かりづらいですが、全てのブロックには人工的な「ひび」を入れてあります。
「コンクリートにひびが入る」=「劣化している」
といった図式が成り立ちますので、このコンクリート達は「劣化した」壁や柱をイメージしているということになります。
この後は建物を修繕する要領で、コンクリートに補修や塗装を施します。この時、補修の方法や塗料の種類を変えて作業を行うことで、修繕過程の異なったコンクリート=試験体が複数作られます。
補修作業では各コンクリートに2種類の工法を施し、長い年月をかけて耐久性のテスト(=観察)を行います。
途中までの作業は共通しています。まずはこのようにコンクリートの上に印を付けていきます。
穿孔します。
そうして開いた穴に「どんな樹脂をどのような方法で注入するか」で補修方法が分かれます。
数多くの工事現場で幅広く活用している工法です。高粘土の注入材を専用のポンプで注入することで、建物の外壁や天井等の浮き・ひび割れといった劣化症状を直します。
まずは2種類の材料を混ぜて、筒に詰めます。
先程開けた穴にポンプの先端を突っ込んで注入していきます。材料をコンクリートに押し込むにはかなりの力を必要とします。
上記の工法と比較すると、汎用度・知名度はやや下がりますが、コンクリートの劣化症状に対して高く効果を発揮するのがIPH工法です。
0.01mm以下の隙間にも樹脂が行き渡ることから、通常の工法よりもコンクリートのひび割れを、より確実に埋めることが可能です。
IPH工法は開けた穴の上に台座と呼ばれる、樹脂を注入するための土台を設置します。
こちらの黄色い液体がひび割れを埋める樹脂です。
専用のカプセルに入れて樹脂を注入していきます。台座の隙間から樹脂がこぼれないよう、カプセルを突き刺したら素早く回してあげる必要があります。
注射器のような何かがコンクリートに突き刺さっているのは不思議な光景です。
2種類の補修作業が完了しました。
同じ環境下に置き、これから長い年月をかけて経過観察を行います。それぞれの試験体が、どのように劣化していくのか楽しみです!
補修を施した試験体とは別に、塗装による試験体も作っていきます。
計5種類の塗料を各仕様に沿って塗っていきます。
コンクリートの表層に特殊な機能を付与することのできる含浸材や、コンクリートを酸性雨や中性化といった劣化から保護してくれる塗装材、美観の長期間維持を目的とした塗料と光触媒を組み合わせた工法等を選定しました。
どれもコンクリートの機能性や美観を保護・向上させるために選定した材料です。
1種類の塗料につき、大体5〜9個のコンクリートを用意しているので、その全てに塗っていきます。
プライマー、中塗り、上塗りの順番で塗り重ねていきます。
コンクリートの密度、または塗料の材質による違いなのか、液体の浸透が速い塗料もあれば、コンクリートに弾かれやすい塗料もありました。
最終的に、どのコンクリートも綺麗な仕上がりになりました。
修繕・改修工事であればこれで終わりなのですが、今回はコンクリートの長寿命化を模索するための共同研究ですので、美しいコンクリートがどのような速度、また様子で劣化していくのか観察・記録を取るのが本命の部分となります。
補修と塗装、どちらの試験体作りも無事に作業が完了しました!
出来上がった試験体は、弊社のビルの屋上や大学の実験室、はたまた長崎の軍艦島に運び、数年かけて経過観察を行います。
特に廃墟で有名な軍艦島は、コンクリートにとって非常に劣悪な環境です。そのような場所にわざと試験体を設置することには意味があります。
コンクリートの劣化が速まり、朽ちていくまでの過程を観察しやすくなるのです。
今はコンクリートの他にも、鉄部塗装の塗り比べや観察も行っています。
長く住み続けられる建物を目指して、山陽工業では工事の他にも今回のような共同研究を定期的に実施しています。
軍艦島に上陸した際の様子は、こちらのブログでご紹介しています。一般の人は立ち入ることのできない建造物の数々を間近で観察してきました。
私達は10年先、あるいは100年先まで健在する建物の実現を目指して、今後もどのような施工方法があるのか、建物にとって本当に良い材料とは何かを常に模索し続けています。
全てはお客様に「安心な暮らし」をお届けするため。 皆様の住まいと資産を長く守り続けるために自分達は何をすべきか何ができるのか、今後も大学の皆さんと連携して建物の耐久性を追い求めるための共同研究を続けていきます。
この記事を書いた人 山陽工業 よーこちゃん
・山陽工業に入社して2年目の広報社員。
・たくさんの現場を巡って、日々様々な知識と写真を集めています。
・施工管理に長けた工事監督さん、この道何十年の熟練職人さんの方々に取材を行い、建物の修繕・改修に関する情報を発信していきます。