コンクリートの表面に、上の写真のような水染みや、白っぽい汚れがついているのを見かけたことはありませんか?
実はこれ、コンクリートのひび割れが原因で起こる「水漏れ」と、「エフロレッセンス」と呼ばれる劣化現象なのです!
どちらも放置しておくとコンクリート構造物自体の耐久性にも影響してしまうため、できるだけ早く補修工事を施してあげる必要があります。
水漏れは分かるけれど、エフロレッセンスってなんだろう?とピンと来ない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回の記事では、以下の内容について詳しくご紹介します。
コンクリートの劣化が気になる方や、コンクリートの建物で発生したエフロレッセンス・水漏れにお悩みの方は、ぜひこの記事をご一読ください!
(1)エフロレッセンスとは?
エフロレッセンスとは、コンクリート内部の劣化によって、コンクリート表面に白い液体が流れ出る現象のことです。白華(はっか)とも呼ばれます。
エフロレッセンスは、下のプロセスで発生します。
上の図のように、コンクリートに含まれる水酸化カルシウムがひび割れを伝って浸入した水分によって溶け出し、外気に含まれる二酸化炭素と結合して炭酸カルシウムに変化します。
そして炭酸カルシウムが乾燥して結晶化することにより、白く見えるようになるのです。
ただの汚れだと軽く考えて放置してしまうと、ひび割れが大きくなりひどい水漏れが発生したり、水酸化カルシウムが溶け出し続けることでコンクリートの耐久性が落ちてしまう恐れもあります。
(2)エフロレッセンスの一般的な補修方法
エフロレッセンスが発生したら、その原因となる水分の入口・流れ出る水酸化カルシウムの出口であるひび割れを埋める必要があります。その際、下のUカット工法と呼ばれる工法で補修を行うのが一般的です。
しかし、Uカット工法はカットした表面だけの補修に過ぎず、水の通り道となっているさらに深い場所に発生しているひび割れまでは埋めることができません。そのため、工事してもすぐにエフロレッセンスが再発してしまう恐れがあります。
山陽工業では、水漏れやエフロレッセンスが発生したコンクリートの補修方法として、IPH工法をおすすめしています。
IPH工法とは、コンクリートの内部(Inside)に樹脂を注入し、加圧状態(Pressure)で硬化(Hardening)させる工法です。
IPH工法は、NETIS(新技術情報提供システム*)に登録されている確かな技術であり、広島県にある広島市平和記念公園レストハウスの復旧にも採用されています。
*NETIS(新技術情報提供システム*)…国土交通省が運営する、新技術・優れた技術に係る情報を、共有及び提供するためのデータベース
IPH工法は、コンクリート内部の空気を抜いて負圧状態にすることで、幅0.01mmの目に見えないほど小さなひび割れにも樹脂を注入することが可能です。
一般的な補修方法では埋められない小さな隙間も樹脂で満たすことで、既に発生してしまっている水漏れやエフロレッセンスを止めることに加え、再発まで防ぐことができます。
そのため、先述した通り、IPH工法は何度工事をしても再発してしまうことが多いエフロレッセンスの補修には特におすすめな工法なのです。
さらに、コンクリート内部の隅々まで樹脂で満たすことで、コンクリートが劣化する原因となる空気や水分の浸入を防ぎ、結果的にコンクリートが劣化しにくくなる=長寿命化にも繋がります。
水漏れやエフロレッセンスを解決するだけでなく、コンクリート構造物自体の劣化を抑制できる画期的な工法、それがIPH工法です!
今回IPH工法を施工したのは、広い範囲で水漏れ・エフロレッセンスが発生していた浄水場のコンクリート水槽です。
「水漏れもエフロレッセンスも、一度の工事でしっかり補修して再発がないようにしてほしい」とご相談をいただき、IPH工法が最適と判断しました。
(1)ケレン
まずはコンクリート水槽の表面を電動やすりで削り、ひび割れを露出させます。
この作業を「ケレン」と呼びます。
(2)マーキング
次に、樹脂を注入するための穴をあける箇所に、印をつけていきます。
樹脂を注入する間隔は、ひび割れから水漏れが発生しているかどうかで異なります。水漏れが発生している箇所は、そうでない箇所より狭い間隔で樹脂を注入するため、この時つける印も多くなります。
(3)穿孔
マーキングした箇所に、電動ドリルで穴をあけていきます。穴をあけた後は、穴の中に粉塵などが残らないようしっかり清掃します。
この穴から、後ほどIPH工法の樹脂を注入していきます!
(4)台座取付
樹脂を注入するカプセルを固定するための台座を、コンクリート表面に取り付けていきます。
水漏れが発生していない箇所(上の写真の赤枠部分)には、「剥離シール」と呼ばれるシーリング材*で台座を取り付けます。
*剥離シール…ゴムパッキンのようにプニプニして水を弾く材料。外壁やサッシまわりに使われる一般的なシーリング材と比較し、剥がしやすく跡も残りにくいという特徴がある。
しかし、この剥離シールは濡れている箇所=水漏れが発生している箇所には使うことができません。
乾いた箇所でないと、シーリング材が剥がれてしまうんです…
そのため、水漏れが発生している箇所には、「止水セメント」と呼ばれる材料を使って台座を取り付けます。
台座がコンクリート表面にしっかり固定されていないと、樹脂が漏れ出てしまったり、コンクリート内部にしっかり注入できなくなってしまう恐れがあるため、台座取付は非常に重要な作業です。
(5)樹脂注入
いよいよ台座にカプセルを取り付け、樹脂を注入していきます!
コンクリート内部の空気を抜くと同時に、樹脂がコンクリート内部に引っ張られるようにして注入されていきます。
この浄水場では、コンクリート水槽の広い範囲にIPH工法を施工しました。樹脂注入中の様子を遠目で見ると、ちょっと不気味な光景ですね…。笑
(6)カプセル・台座撤去
樹脂の注入が完了し、しっかり固まったことを確認したら、カプセルと台座を撤去していきます。
剥離シールは手で引っ張ればある程度撤去できますが、止水セメントを撤去する際はハンマーや電動工具を使う必要があります。
今回の工事では止水セメントの使用箇所が多かったため、電動工具で撤去しました。
(7)穴埋め・下地処理
最後に、樹脂注入のためにあけた穴を埋めます。
穴を埋めた後は、コンクリート表面を整えます。
(8)施工完了!
こちらで、IPH工法によるコンクリート水槽の水漏れ・エフロレッセンス補修工事はすべて完了です!
施工前と比較して見ると、水漏れ・エフロレッセンスが発生していた箇所やその周りのひび割れ部分がしっかり補修されたことが分かりますね。
施工後数年経過した今も、水漏れ・エフロレッセンス共に再発のご連絡はいただいていません!
放置することで被害が大きくなってしまう恐れのある、コンクリートの水漏れ・エフロレッセンス。
この機会に、一度の工事でしっかり補修できるIPH工法の施工を検討してみませんか?
山陽工業では、マンション・ビルや戸建ての外壁はもちろん、橋や地下ピットなど、毎年様々なコンクリート構造物においてIPH工法を施工しています。
知識・経験が豊富な建物のプロによる建物調査とお見積は無料で承っていますので、是非お気軽にお問合せください。
◆こちらの記事では、マンションの外壁で再発したエフロレッセンスをIPH工法で止めた事例についてご紹介しています。併せてご覧ください。
なお、対応エリアは以下の通りです。
この記事を書いた人 山陽工業 かおり
・山陽工業で働く1児の母(2015年入社)
・「こんなこともやっているんだ!」と知っていただける、比較的小規模な工事や少し特殊な工事についての記事を主に投稿します。
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