日々の生活を手助けしてくれるエレベーター。
普段は何気なく利用していますが、建物の高層階に行くときや重い荷物を持っているとき、これがもし階段を上らなければいけないとしたら…。そう考えると本当にありがたい存在です。
エレベーターは私たちが安全に利用できるよう、点検業者さんが定期的に点検を実施してくれています。
しかし、エレベーターの安全を保つためには、建物の状態も密接に関わっています。
エレベーターピットと呼ばれる場所で漏水が起こることで、エレベーターの故障などに繋がる可能性があるんです。
今回の記事では、なぜエレベーターピットで漏水が起きてしまうのか、具体的にどんな被害が起こり得るのか、詳しくご紹介いたします!
そもそも「エレベーターピット」ってあまり聞きなれない言葉ですよね。一体どこのことを指すのでしょうか?
まずかごというのが、人が乗る部分です。私たちを目指すフロアへ連れて行ってくれる箱のことです。
そして本題のエレベーターピットは、下図の塗潰し部分を指します。エレベーターが停止する最下階の床面から、かごの下の底面までの空間のことです。
尚、エレベーターには様々な種類があり、その種類によってこのピット内に何が設置されているのかは変わってきます。
さて、エレベーターピットがどこを指すかわかったところで、続いてはピット内で起こる漏水の原因について解説していきます。
漏水というと、天井から雨漏りするようなイメージがまず思い浮かぶかもしれません。
しかし、エレベーターピットは先ほどの図を見てもわかるように、最下階よりも低い位置=地下部分に位置しています。
なぜ地下部分で漏水が発生するのでしょうか?
それは、激しい雨が降った際などに、水が地下部分まで染み込んでいき、その水が蓄積していくと、エレベーターピットの入隅部分※やひび割れている部分から、ピット内に浸水してしまうためです。
※入隅(いりずみ)
2つの面が交わった角の、内側部分のことをいいます。
実際のエレベーターピットで見てみると、写真赤点線部分が入隅です。
漏水とは言え、発生しているのは地下部分です。天井から水が降ってくる訳ではないので、一見あまり実害がないようにも感じますよね。
しかし、放っておくとエレベーターの故障など、大きな被害が出てしまう可能性があります。
なぜ故障に繋がるのか?その他にどんな被害が起こり得るのか?
次の項目で詳しく見ていきましょう。
エレベーターピット内で漏水が発生すると、主に次の2つのような被害が起こってしまいます。
昨今では機械室レスタイプのエレベーターも増えており、通常は機械室に設置されている機器が、ピット内に設置されている場合があります。
ピット内に漏水した水を放置すると当然水は溜まり、水位が上がっていきます。水が20cm程度の高さまで溜まると、ピット内に設置した機器に水が到達し、故障したりサビてしまう可能性があります(機器に到達するまでの高さは、エレベーターによって異なります)。
ピット内の水位が上がると、エレベーターの周り…つまり、乗り場部分の床にまで水が漏れてしまう恐れがあります。
ホテルやオフィスビルなど、床にカーペットを選んでいる建物の場合、水が染みてカーペットが汚損される被害が発生します。
ピット内に水が漏れてしまう事態を防ぐため、新築時にコンクリート内部に止水板が設置される場合もあります。
しかし、この止水板が地震などの影響でズレてしまったり、止水板を超える水位まで水が達すると、止水板では食い止めることができません。
写真は実際に漏水したエレベーターピットの様子です。こちらはまだ水位が低いので、幸いにも上記のような被害は出ませんでした。
大きな被害が起こらないよう、早めに漏水に気付きたいところではありますが、エレベーターピットは普段目にしない場所のため、実害が出ない限り気付くのが難しいですよね。
しかし、エレベーターは定期的な点検が法律で義務付けられているため、点検の際に点検業者の方が気付いてくださることがあります。
実際弊社でもエレベーターピット内の漏水についてご相談をいただく際に、「点検業者の方に水が漏れていると報告を受けた」というケースは少なくありません。
では、エレベーターピットで漏水が起こった際、どんな工事を施せば漏水を食い止められるのでしょうか?
一般的には発泡ウレタンという、水でモコモコと膨らむ止水材を注入し止水します。
しかしこの発泡ウレタン、0.05mmレベルの細かいひび割れからの漏水は防ぐことができません。
更に発泡ウレタンで止水を試みた後、漏水が止まらないため別の対策を施そうとなった場合、この発泡ウレタンを除去するという手間も発生してしまいます。
そこで山陽工業では、「IPH工法」をおすすめしております!
IPH工法とは、コンクリートの内部(Inside)に樹脂を注入し、加圧状態(Pressure)で硬化(Hardening)させる工法です。
イメージ動画もありますのでご覧ください。
このIPH工法は発泡ウレタンでは入り込むことのできない、
0.01mmレベルの細かいひび割れにも注入することが可能です。
下の画像を見ると、IPH工法がいかに微細なひび割れにまで入り込むことができるのかが一目でわかりますね。
また、IPH工法は発泡ウレタンのように除去の手間も発生しないので、将来的にまた何か工事が必要となった際も、煩わしい除去作業を行う必要がありません。
では、実際に弊社で行ったエレベーターピットの止水工事で、工事の流れを見ていきましょう!
(1)乾燥・漏水場所特定
早速漏水を止める工事を…の前に、もし水がピット内に溜まってしまっている場合、ポンプを使用して水を抜き、バーナーでピット内を乾燥させます。
これは、漏れた水でコンクリートが濡れてしまった状態ですと、どこから水が漏れたのか判断が難しいためです。乾燥させた後にじっくり観察し、水が染み出てくる場所を突き止める必要があります。
写真は同じように地下部分でIPH工法の止水工事を行うため、樹脂注入前に排水作業を行う様子です。ポンプを用いて大掛かりな排水作業が行われました。
尚、漏水部分以外にも、基本的に入隅部分はすべて樹脂を注入します。非常に漏水しやすい部分のため、今度は入隅からまた漏水した…とならないよう、先手を打っておくのです。
(2)樹脂注入準備
漏水部分や入隅部分など、樹脂を注入する場所にマーキングをし、マーキング部分に穴をあけます。ちなみに、穴をあけることを穿孔(せんこう)と言います。
穿孔した部分に、樹脂を注入するための台座を取り付けます。
(3)樹脂注入
そしていよいよ樹脂を注入していきます!
樹脂が入ったカプセルを先程取り付けた台座部分にセットし、樹脂を注入していきます。
写真では伝わりにくいですが、微細なひび割れにまで樹脂が入り込んでいきます。
樹脂がすべて注入できたら、カプセルと台座を撤去し、穿孔した部分を埋め戻して施工完了です。
◆実はこんな技が…
ここまで見てきた工事の写真、なんだか少し違和感がありませんか?実は壁と床の入隅部分に、意図的に写真赤枠部分の土手を作ったんです。
この土手を作る際、中にチューブを埋め込んでいきます。
その後チューブを引き抜き、土手の内部に意図的に空洞を作ります。この空洞が、入隅の隙間全てが一体化できるつなぎになります。
規模や漏水状況によってこの技を活用すべきかどうかは変わってきますが、どのような施工方法が最適か、きちんと調査し判断いたしますのでご安心ください。
ただ正直なところ、「これで絶対に漏水しなくなる」と言い切ることはできないのです。
なぜなら、漏水していた箇所からの漏水を止めても、地中から水分がなくなる訳ではないので、水は別の場所に逃げてしまいます。また別の場所がひび割れて、そこから漏水してしまうということは十分考えられます。
そのため前述の通り、漏水有無に関わらず入隅にも工事を施し、少しでも再発の可能性を減らせるよう、その時点でできる限りの対策をさせていただいております!
さて、気になる工事の日数と価格について解説いたします!
特に工事日数は、エレベーターの使用にも関わってくるので、気になるところですよね。
2~3日程度
上記は朝から夕方まで作業を行った場合の目安です。漏水の状況などでも変動するため、ご相談いただいた際はきちんと現地確認を行った上で、明確な日数をお伝えいたします。
尚、作業中はエレベーターを停止させていただきますので、ご了承ください。
ただし、作業を行っていない夜間や明け方の時間帯は、エレベーターはご利用いただけます!
400,000円~
こちらも規模や漏水状況によって変動がございますので、参考価格としてご認識いただければ幸いです。
御見積は無料で承っておりますので、明確な金額が知りたい!という場合は、お問い合わせいただければ現地確認の上、御見積いたします。
「まだ水が溜まるようなレベルではないんだけど、心配なので相談したい…」
「点検業者さんに漏水してると言われたけれど、どうすればいいのかわからない!」
ご安心ください。山陽工業ではご相談から調査・御見積まで無料で承っております。
IPH工法施工技能士の有資格者が、皆さまの大切な建物を責任を持って診断いたします。
なお、対応エリアは以下の通りです。
IPH工法についての更に詳しい解説は、山陽工業のHPでご紹介しております。ぜひこちらもご覧ください。
わかりやすい漫画の解説も掲載しております!
漏水のご相談だけでなく、外壁補修工事や塗装工事など、建物に関する様々なご相談を承っておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください!
この記事を書いた人 山陽工業 みほ
・2015年に山陽工業の管理部として入社
・事務職として建設業の書類作成を極めていましたが、お客様により喜んでいただけるようなご提案ができるよう、現在工事内容についても勉強中!